ksuna’s diary

フリーターの日記。名は慶生。

予想外の人生、今の自分が望む選択をしたい

私にとって、人生最初の大きな決断は大学進学。一応、ではあるが勉強したい分野もあったし、高校のクラスメート大学進学希望者ばかりだし、何より働きたくないという気持ちが強かった。実質、モラトリアム延長のために決めた進路だった。家庭は裕福な部類ではなく、私に与えられた選択肢は学生ローン月5万円で地元の国公立か、月10万で関東の国公立か、学費免除がほぼ確定で学生ローン不要の地元の私大か、の3つ。

結果としては関東の国立を選択したのだが、そこには複数の不安と迷いがあった。

 

友達ができるか?一人暮らしでホームシックにならないか?といったごくありふれた心配に、私の場合は利子込みで600万円以上のローンを抱えて就職後やっていけるのか?という不安も加わった。

ローンを抱えたくないのなら地元の私大に入るか就職すればよかったのだが、当時は余裕で学費免除になる大学なんてイヤ!なんて奢った感情があったのだ。地元国立は数学の配点が高くて厳しかった。アルバイトさえしたくない人間だったのでもちろん就職もナシ。

迷った末、「実家/地元にいたくない」という元も子もない理由で最終決定を下したように思う。

 

毎日惰性で授業を受け、夏休みと冬休みにはとりあえず学校の受験対策講習を取り、なんだかんだでテキトーな理由で決めた進学先に無事合格。

趣味同じ友達できるかな〜

原宿とか行ってみるぜ〜都会民になるぜ〜

学業とは何の関係もない希望に胸を膨らませて通い始めた大学で私は衝撃を受けた。周りが金持ちばかりなのである。

海外旅行や短期ホームステイの経験があるのはごく普通。夏と冬の長期休みには数十万円かかる短期留学が当たり前。3、4人に1人は長期留学も予定しているような環境だった。

一方の私は、家賃と学費を奨学金という名の借金から支払う状況。サークルや短期留学さえアルバイトで貯金しなければできない経済力だ。長期留学は期待さえできなかった。

(お察しの通り、私が入学したのはいわゆる外国語・国際系の大学である)

 

育ちの違う人間ばかりの環境で、私は次第に学業にも人生にもやる気をなくしていった。

価値観や金銭感覚の不一致もそうだが、「なぜ自分は人並みの学生生活を送れないのか?」という不満が1番大きかった。自ら公開するのもなんだが、TOEICの成績は帰国子女を除けばトップクラス、英語以外の科目も通年で学費を半額免除になる程度には優秀だったのだ。サークルの同期たちがCを取る講義でAの私が、なぜこんな人生を送らなければならないのか?なんで貧乏に生まれたからってやりたいこと我慢しなくちゃいけないの?私じゃなくて親のせいじゃんそれ?ハッピーを期待した大学生活、1年目にして社会と親への苛立ちが増すばかり。

大学卒業後の人生に考えを巡らせ、将来に渡って経済格差が影響する事実にも気づいた。私が学生ローンを返済する間に他の学生たちは着々と貯蓄を増やすのだろう。金持ちの学生達の親は年金も退職金も十分もらえるはずだ。私の親は?自営だからどちらもあまり期待できないだろう。

 

ストレスが重なり、2年目の夏から本格的にメンタルに不調をきたし始めた。ひどい時は1日3食ならぬ1週間3食。部屋で排泄時以外寝たきり。トイレからベッドまでの間さえ床に横たわって休憩しなくては移動できない。牛乳を注いだマグカップを持ち上げるのも難しい。そんな体調で通学など出来ず、留年した。

 

 

少し体調が回復した冬にさえ、友人に「見るからにやつれてるよ?やばいで」と言われる状態の私に、再度決断の時が訪れた。

留年すると奨学金は得られなくなる。つまり、大学生を続けるのは不可能な状況に陥っていたのだ。

私の選択肢は2つ。中退か休学である。

思い返せば、人生を左右する重大決定を下してよい精神状態ではなかったように思う。1番ひどい時より改善したとはいえ、まだ食欲がなく意識しないと1日食事を忘れる程度には不調だった。しかし、こうなってしまった以上決意するしかないのだ。貧乏の家に生まれた私には、とりあえず大学を続けておくという道はなかった。

結局、中退すると奨学金の返済が始まってしまう、という現実的な理由で休学に決めた。借金を返す余裕などないから、実際は休学しか選べないようなものだった。

 

決断はこれだけではない。休学後どう生きるかも決める必要があった。

普通なら実家に戻って休養するところなのだろう。進路を相談した教授にもそう勧められた記憶がある。でも、私はそうしたくなかった。地元より娯楽の多い都会を気に入っていたし、何より、大学2年間ですっかりコンプレックスになった生まれを嫌でも見せつけられる実家では暮らしたくなかった。

私の望み、都会の一人暮らしを続けるためには、働き始めねばならぬ。だがしかし、正社員就職するのは休学開始までに間に合わない。仮にどこかで正社員になれたとしても、しばらく絶食に近い生活を送っていたから、すぐには体力が追いつかないだろう。そこで、唯一間に合う(と当時の私が思った)ルート、「今暮らしているここでフリーターになる」を選んだ。

 

…もしバイトが見つからなかったら?また調子を崩して働けなくなったら?

餓死するんだろうか。

…餓死するならそれでもいいや!どうせ大学出ていいとこ就職して趣味代も十分稼ぐ、そんな理想の人生はもう送れない。

死んだらそれはそれでOK。 半ば投げやりな気持ちで決断した。

 

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現在の私は、決断の通り、大学休学中の実質フリーターとして生きている。高校生の頃には全く想定していなかった人生だ。

 

そしてこちらも想定外。なんと、予想より断然楽しく暮らしているのだ。

休学後、知人が紹介してくれた飲食のアルバイトを始めてすでに1年。外国人のスタッフが多い場で、大学とは違った国際交流の経験を得られている。自分で稼いで生活できるという事実が自信にも繋がった。まかないで食費が浮く上、人間関係も良好である。

加入したての社会人サークルも楽しい。各地の散歩や美術館の展覧会もとてもワクワクできる。1人で色々な土地をまわるうちに行動力が増したのか、現在は西日本を2週間かけて観光する計画をたてるまでになった。

趣味で派手なカツラを被っても、誰も気にしない。休日には青・緑・紫・ピンクと気分に合わせたヘアカラーで遊んでいる。都会ゆえの自由を謳歌するのだ。

休学延長申請に署名をお願いした教授や大学時代の先輩にも、会うと「大学生の頃より明るくなった、楽しそう」と言われる。自分でも100パーセント確実にそうだと思える。

 

私の「迷い」と「決断」はこれで最後ではない。今まさに貯金して大学に入り直すか海外に長期旅行に出るかの選択を迫られているところだ。この決断の後だって、別の分かれ道が現れる。大学を途中で辞めるかかなり遅れて卒業することになるだろうから、4年で大学を出て就職する友人たちより圧倒的に貧乏な中年&高齢者ライフが私を待っている。そんな時、今までよりずっと厳しく暗く、どちらも選びたくない、でも決断をせねばならない時が来る。

 

分かれ道の前に立ち尽くした私を助けてくれるのは、きっとこれまでに下した決断だ。辛いこともあるけれど、選択の先には、きっと今は予想もつかない面白いことがある。そう期待して生きてゆこう。これまでの人生からそう教わったのだ。

 

人生がどうなるかなど、わかったものではない。わかるのは、現在の私がときめくかそれを望むか、それだけ。これからも今この瞬間の私が楽しめる選択をして生きてゆきたい。